tel:018-883-0680

剣道コラム

『セルビア剣道日記』 1回目

秋田は、初雪が降っていよいよ本格的な冬を向かえる季節のようですが、皆様には益々ご健勝にて日々稽古に励んでおられることと存じます。こちらベオグラードでも、本日初雪が降りました。12月になると厳しい冬を向かえるようです。聞くところによると- 15℃とか-20℃とか言っておどかされております。

 

10月1日に成田を出発し、あっという間に2ヶ月が過ぎようとしています。出発に際しては、諸先生・剣友の皆さんから身に余る激励やご支援、アドバイスを頂き、深く感謝申し上げます。

 

成田を10月1日の午後0時40分発のルフトハンザで12 時間のフライトの後、中継地のドイツ・ミュンヘンに着いたのが現地時間の午後5時45分。ミュンヘンで2時間ほどの待ち時間の後、同じルフトハンザに乗って約1時間半で、ベオグラードに着きました。ベオグラード到着は、同じ 10月1日の午後9時5分。日本との時差は7時間でした。(10月28日に冬時間に変わっ たので、現在の時差は8時間です。)空港には、セルビア剣道連盟の前会長と新会長が出迎えに来てくれており、ここから、私のセルビア剣道日記が始まることになりました。

 

こちらに着いた早々、10月5日(土)・6日(日)に近隣諸国の参加を得たベオグラード・カップなる国際大会が開催され、事情も良くわからな いまま、審判を仰せつかり、かつ男子団体と男子個人戦の決勝審判まで任されました。イギリスからテリー・ホット氏、ドイツのクンプ氏ほか、フランス・イタリア・フィンランド・ハンガリーなどからヨーロパの7段が審判に来てくれておりました。参加チームは各国のナショナルチームではなく、任意の剣道クラブとしての参加でしたので、秋田で言えば、道場対抗戦のようなものでしょうか?それでも、セルビア剣道連盟としてはここまでにする のには大変だったようです。

 

JICA(ジャイカ)のSV(シニアボランティア)として、私の任務は、セルビア剣道連盟に配属され、セルビア剣道の競技力向上、剣道普及と技術向上に務めるというものになっております。現在、セルビア剣道連盟には13 の剣道クラブが加盟し、約200人が所属しております。150人ぐらいが常時稽古を継続しているような感じがしております。有段者が約70名、最高段位は五段です。幼少年も30人程度はやっているようですが、多くはありません。年齢的に は20代・30代の人が多く、高齢者でも60歳ぐらいまでの人達が長老クラスと言えるでしょうか。(この人達が30年ぐらい前にこの国で剣道を始めたとのことです。)

 

私は、現在、首都ベオグラードに住んでおり、通常はベオグラードにある3つの剣道クラブを巡回指導しております。金曜日と日曜日は休みですが、そのほかの日は稽古に出かけております。秋田にいたときよりも、稽古回数は増えましたが、これが仕事なのでほとんど毎日が剣道ということになっております。もちろん、こちらの人達も仕事があるので 、平日は夜の7時、木曜日は夜の9時からの稽古なっており、はじめは生活パターンに慣れるのが大変でした。こちらの人達は、本当に剣道が好きで、何でこんなに日本から遠く離れたこの国の人達が、こんなに一生懸命剣道に取組んでいるのか不思議でなりませんが、未だに答えは見つかっておりません。剣道のもつ何らかの魅力がそうさせてい るとしか思えません。とにかく剣道が好きで、ある日本の先生は『彼らは剣道に飢えている。』とまで言っておられました。そんな状況なので、こちらも大いに働き甲斐を感じているところです。

 

 

11月1日から3日までの3 日間は、ベオグラードから車で3時間ぐらいのところにあるベーチェという町でジュニアの強化合宿がありました。体育館がホテルのすぐとなりにあって、幼少年から17歳までの35名とイン ストラクター11名が参加して行われました。防具のない初心者クラス・防具をつけた幼少年クラス・防具をつけた上級者の3クラスに分けて指導を行いましたが、みんな真剣に取組んでくれました。

 

また、11月17日には、『全セルビア個人戦』が開催されました。これに先立って、一週間前の11 月10日に審判講習会を開催しました。この国では、審判のできる人が少なくて、となりのハンガリーに審判の派遣を仰いでいるとのことだったので、審判が育たなくては剣道もよくならないと思い、開催しました。有段者、26名が集まり、熱心に私の話を聴き、審判実技をこなしておりました。その成果も あって、17日の大会では、自国の審判のみで立派な審判ができておったと思います。

 

この『全セルビア個人戦』の試合結果などを参考にして、来年4月にフランスのクレルモン-フェランで開催されるヨーロッパ選手権へのナショナルチームメンバーを選抜しています。12月には強化合宿を2回開催す る予定です。昨年のヨーロッパ選手権では、女子個人で3位に入賞し、セルビアでは初めてのメダルを獲得したとのことで、みんな来年4月のヨーロッパ選手権に向け、意気揚々といった感じがあります。

 

 

ユーゴスラビアが解体し、小さい国土となったセルビアには今のところ、世界に誇る観光名所は少ないようです。ベオグラードでも、写真のカレメグダン公園くらいでしょうか。それでも、ここの人達はやたらに親切です。特に日本人には好感を持ってくれているようです。日本がODAで援助した黄色いバス (100台を寄付)に日本とセルビアの国旗がペイントされて走っています。失業率も高く、経済環境は大変厳しいようですが、EU加盟に向けて頑張っているようです。私の任期は2 年間に限られたものですが、お近くにおいでの節は是非ご連絡ください。できれば、防具をご持参いただければありがたく存じます。

 

秋田県剣道連盟の益々のご繁栄と会員皆様のご健勝・ご活躍をお祈りいたし、セルビアからの報告といたします。

会員からの寄稿TOP